関西SDGs貢献ビジネスネットワーク キックオフ会合

2018年3月22日(木)、大阪・ホテルニューオータニ大阪にて、SDGsに関心のある事業者に向けて主催する『関西SDGs貢献ビジネスネットワーク キックオフ会合』が開催され、その中で吉本興業がSDGsの取り組みを紹介しました。

主催者挨拶では、近畿経済産業局長の森清様からご挨拶をされ、SDGs貢献ビジネスネットワークの目的を以下のように語りました。

1.SDGsについて企業の皆さんが勉強していく場を設定すること
2.関西から活発なSDGs活動を情報発信していくこと
3.日本企業、とりわけ関西企業はSDGsに活発に取り組んでいることを世界にアピールする
2018.03.22
2015年の招致を目指している「大阪万博」のテーマが「いのち輝く未来社会のデザイン」であることから、「このテーマこそがSDGsそのもの。真剣に議論することは、万博誘致にもつながっていくと思います」と大阪万博招致実現に向けて力を込めました。

第一部の基調講演は、「SDGs時代の企業戦略 関西をSDGsの先進地域に」と題して、関西経済連合会副会長で、太平洋人材交流センター会長、関西生産性本部会長、レンゴー(株)代表取締役会長兼社長の大坪清氏が登壇しました。

2015年9月に国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」。それ以来、国際社会でもSDGsの関心が急速に高まってきました。このキックオフ会場が開催された3月22日は「水の日」であることから、SDGsの17の目標の一つ「目標6: 安全な水とトイレをみんなに」を取り上げられました。

ビジネスの立場からの貢献については、「SDGsは国連の取り決めなので、政府がするものと錯覚する人が多いかもしれませんが、企業が真剣に考える事業です。未来社会、経済成長、エネルギー、安心・安全、人やジェンダーの平等などの社会的解決が問題とされていますが、それをSDGsが17の目標、160のターゲット、230の指標に掲げています。また、関西経済界は2025年の万博招致で「いのち輝く未来社会のデザイン」というスローガンを掲げていますが、これはSDGsの目標とピッタリです。SDGsは大きなビジネスチャンスとも言われており、17の目標が達成されると12兆ドルの市場、3億8000万人の雇用が創出されるとダボス会議で言われています。SDGsの取り組みをポジティブにとらえることこそが、グローバル社会で日本社会が生き残れるポイントだと思います」と続けました。

続いては、「中堅・中小企業も含めたSDGsモデル創出に向けて」と題した古川実氏による基調講演が行われました。関西SDGsプラットフォーム顧問、大阪商工会御所副会長会頭、関西・アジア 環境。省エネビジネス交流推進フォーラム(Team E-Kansai)会長、日立造船(株)相談役の古川氏は、SDGsが中堅・中小企業の事業活動においても重要になることから、以下の2点の視点についての認識をも持つ必要があるとお話されました。

1. これから事業をしていくにはSDGsを正しく認識しておかなければ大変大きなリスクに直面する。
  サプライ・チェーン・マネジメントをしっかり見据えて生産活動をしているかが問題になる。
2. SDGs活動そのものが企業活動そのものであること。企業性や独自の発想力で海外でのビジネスチャンスをすでに展開している中小企業も多くありますが、さらにSDGsの観点で新たなビジネスチャンスを見つけてほしい。

また、「近江商人の三方よしに加えて未来よし、この精神でやっていかなければと思います」と意気込みも語られました。
「吉本興業×SDGs~笑いの現場から伝えられること~」と題した内容で、吉本興業での実際の取り組みを発表しました。

2017年1月から取り組みを始め、まだ1年余りであることや、まずは理解することからと思い、吉本興業の社員全員で勉強会を行うことから取り組みをスタートしたこと、その勉強会ではさまざまなセクターの方にも参加してもらったことなど、自分たちがまず取り組むべきことは、芸人の言葉や自分自身の言葉で、多くの方にSDGsを伝えていくことだと理解したこと。

続いて、SDGsに取り組む以前から、実はSDGsの活動につながることをしていた例として、2011年からスタートした「あなたの街に住みますプロジェクト」で、地域の人と一緒にその地域を盛り上げる活動をしていたことや、大震災の際に被災地に芸人を派遣し、被災者に笑顔を届ける「あおぞら花月」という活動をしていたことなどを紹介しました。

さらに、その他の取り組みとして、吉本が行う4月/沖縄「島ぜんぶでおーきな祭」、8月/北海道「みんわらウイーク」、10月/京都「京都国際映画祭」)でのSDGsの啓蒙活動についても紹介しました。

「島ぜんぶでおーきな祭」では、オリジナル動画の制作やスタンプラリーの実施、SDGsをテーマにした写真展やシンポジウムの開催、『僕らの地球学校』(テレビ東京)などを紹介。
  
また、今年で10回目となる「島ぜんぶでおーきな祭」では、「みらいへつなぐ、じもとのちから。」をテーマにCMを作る「JIMOT CM REPUBLIC」を立ち上げたことなどを発表しました。

“8月8日は道民笑いの日”と定めた北海道「みんわらウィーク」では、お笑いライブのほか、スタプラリーやプロアスリート参加の運動会が行われ、人気芸人5組が17の目標を盛り込んだ即興漫才を披露する『SDGs-1グランプリ』を開催したことを報告。今年の「みんわらウィーク」では、17の通過ポイントをクリアーしていく札幌市内でのウォーキングイベントを考えていること等、昨年から更にパートナーが増えていくことの実感を伝えました。

最後に、SDGsについて、吉本では「まずは知っていただくことから」と、さまざまなエンタメの形でお客さんが触れられる機会を積極的に作ってきたことを話し、SDGsへの取り組みには
①SDGsとは何かを知ること
②自分のこととして考えてみて、自分では何ができるかを考える
③自分にできることを行動に起こす
の3段階があると考えていること、「少しづつ進んでいくことで、SDGsの目標をみなさんと共に達成したい」ことを伝えさせていただき、吉本興業の取り組み紹介は締めくくられました。
続いて、パネルセッション1「現地コミュニティとの共生から生まれるSDGs貢献ビジネス~ODAのその先に~」が行われ、モデレーターに京都大学大学院工学研究科教授、NPO法人道普請人理事長の木村亮氏が、パネリスに日本ポリグル(株)代表取締役 小田兼利氏、音羽電機工業(株)取締役 吉田厚氏、(株)わだまんサイエンス代表取締役 深堀勝謙氏が登壇しました。

途上国における貢献活動の実際的な事例紹介として、持続的な事業としていくために何が必要かをパネリストの三名に語っていただきました。

途上国で浄水設備設置のビジネスをされている小田氏は「丁稚奉公からののれん分けというなにわ商法で、人材育成をしています。大阪には世界一の技術を持つ中小企業が溢れています。途上国に進出して、貧困層から起業家や社長を作ることが世界の社会貢献になると思います。また、自分たちのビジネス展開するのではなく、現地の人のビジネスになることが大事です」と語られました。

音羽電機工業(株)の吉田氏は、アフリカ・ルワンダでの雷対策の活動をされています。世界でも雷多発地帯で、落雷事故が絶たないルワンダ。かの地出身の学生がインターンシップで音羽電機工業に訪れたことがきっかけで、その事情を初めて知ったとそうです。「アフリカの現状を行ってみて初めて知りました。避雷技術をもって、ルワンダの人たちを守りたいと思いました」と意気込みを語られました。木村氏も「まずは知ることが大事。きっかけ作りが重要だと思います」とコメントされました。

「ごまで世界平和」を掲げるわだまん(株)深堀氏は、ごまの栽培が途上国の収入源になっているものの、日本の過度な安心・安全、利益追求の結果、栽培地にしわ寄せが行き、農家が困窮している実情を周知。そして、ゴマの加工技術を途上国の人々に伝授し、ビジネスチャンスに生かす取り組みをされています。「ひらけごま持続可能サイクル」とのコンセプトに、「愛の種をまくと笑顔の花を作るり、口コミ、和といった実がなり、それを収穫するというサイクルが生まれると持続可能なサイクルになるのでは」との持論を展開。「愛でもってSDGsの活動をしましょう」と参加者を鼓舞しました。

木村氏は「この3名に共通していることは、現地に行って考えていること。現地に行けない企業は、パートナーを見つけて、そのパパートナーに現地に行ってもらう。パートナー制度にしていろんな活動を関西でできたらと思います。関西には元気なNPOもあります」とのアドバイスに加え、自身のNPO法人「道普請人」についてご紹介。土のうを使用して穴だらけの道を一日で修復する技術を紹介され、「土のうを世界語にするのが私の目標です」と明かされました。また、「NPO法人道普請人として将来、ノーベル団体平和賞を受賞したい」と木村氏、夢も語られました。

最後に木村氏が「これからの活動にはQPMI」が大事と、丸 幸弘氏が提唱する「Q:クエスチョン、P:情熱、M:ミッション、I:推進力」というキーワードを紹介され、パネルセッションを終えました。

パネルセッション2では「SDGs時代の新たな協働と付加価値創造オープン・イノベーションとネットワークの活用」とのテーマでディスカッションが行われました。モデレーターには政策研究大学院大学教授 大野泉氏、パネリストにはオムロン(株)サスティナビリティ推進室室長 平尾佳淑氏、サントリーホールディングス(株)執行役員 コーポレートコミュニケーション本部長 福本ともみ氏、リマテックホールディングス(株)代表取締役社長 田中靖訓氏が登壇されました。

第一部のセッションでは、途上国でのビジネスでの貢献を含めながら、広い形でのSDGsの企業のかかわり方が紹介されました。第二部のセッションではまず、SDGsに取り組むことで企業にどんなメリットがあるのか、それぞれに語っていただきました。

従業員の68%がグローバルな社員で、海外売上高も58%というオムロン(株)。その社憲「われわれの働きで われわれの生活を向上し よりよい社会をつくりましょう」は、創業者の立石一馬氏が常に社会に利益を還元していくこが重要だと言っていたことに基づきます。「オムロンにとってサスティナビリティとは何かを考えました。企業理念を実践し、事業を通じて世界課題を解決し、よい社会を作ること。社会の持続性も重要だと考え、昔からの企業理念を企業目標としてやってくことにしました」と平尾氏。
サントリーグループの「水と生きる」取り組みも、創業当時の理念「やってみなはれ」と「利益三分主義」が礎になっていると福本氏。「創業以来大切にしてきた考え方、実行してきたことが現在の理念体系になっています。2015年に設定した『水と生きる』は、水をはじめとする自然環境を持続可能なものにし、社会に潤いを与えること、常に新しいことにチャンレジしていくことの思いを込めています」と説明されました。そして、水のサスティナビリティへの取り組みとして2003年より「天然水の森」活動や、2004年から次世代環境教育「水育」の活動などを取り上げ、「グローバルな事業を展開する中で、単に利益追求だけの企業だけではなく社会にしっかりお返ししていく理念を大切にしたい」と語られました。SDGsができたから活動するのではなく、企業の活動をSDGsと照合したときに何が必要か、SDGsをチェックリストとして捉えていきたいと続けられました。

リマテックホールディングスの田中氏はリマテック・グループのSDGsの取り組みとして、環境修復事業や再生可能エネルギーの取り組みを例に挙げ、それらの内容をSDGsに当てはめたところ、「事業の一つ一つがSDGsの17の目標に関連しています。そして、事業が及ぼす社会への影響を実感しました。それが事業を進めていく上での非常に重要な要素になっています」とコメントを残されました。

また、今後の課題に関して平尾氏は、「サスティナビリティの指針としては、事業を通じて何を提供しているか、一人一人に伝えないとモチベーションも上がらず、やっていることも分からない。自分たちの仕事が社会価値にどう繋がっているのか明確にし、社会環境の変化を見逃さず、常にアンテナを立てながら我々にとって事業で達成できるものはあるのか、それがサスティナビリティにどう繋がるのかということを考えながら取り組んでいる」とのことでした。

福本氏は「水一つとっても自然環境や社会で捉える方が全く異なります。ベトナムで水育をしていますが、安全な水にアクセスすることから始め、小学校を中心に水回りの設備を整えるサポートもしています。地域が抱える問題は全く違うので、日本の活動をそのまま伝えるのとは違いますが、水の理念を共有することからスタートだと思います」と海外事業を通じて生じた課題を紹介。

田中氏も「海外での事業展開はTeam E-Kansaiのミッションです。途上国の現場で活動が増える一方で、環境の規制もなかなかありません。そういう中で何ができるか、関わっていかないといけないと思います」と続けました。

また、「社会貢献はリスクマネージメント部門の活動と今まで捉えがちでしたが、そうではなく投資なんだと。経営戦略の中に組み込んでやっていくマインドセットが必要です」と福本氏。「大きい会社も小さい会社も基本は一緒なんだなと思いますので、情報交換から始めさせていただきたいと思います」と交流も呼びかけました。平尾氏はステークホルダーの観点から話したいと前置きをし、「SDGsを達成させて企業価値を上げたいと思っています。企業価値を上げること=株価アップ。投資家がステークホルダーということで、我々がやっていることをきちんと伝えることの大切さを感じています。イノベーションはそんなに簡単には起きませんが、イノベーション(革新)とインプルーブメント(改善)の両輪で、一緒にやっていく仲間を作ることが大事だと思います」とまとめられました。

最後にJICA関西所長の西野恭子氏からのご挨拶があり、「SDGsのコンセプトは関西でも広まってきたと思いますが、お一人お一人が話題にしたり、聞いたことをお話いただいたりしてほしい。今日のような場をSDGsのプラットホームとしても活発化させていきたい」と今後の展望を語られました。