制作期間4年半!まるむし商店 磯部のSDGsクレイアニメ劇場

まるむし商店・磯部公彦の個展「まるむし商店いそべのクレイアニメワールド」が2月9日(金)から12日(月)まで、大阪・LAUGH & PEACE ART GALLERYで開催されました。会場に展示されたのは、「SDGs」の17の目標をテーマにしたクレイアニメ動画で使われた粘土作品たち。完成した動画も流されました。もともと趣味で釣具のルアーなどを作っていた経験を生かしてクレイアニメ作りを始めたという磯部に、今回、4年半かけて完成させた17の作品について語ってもらいました。
2024.02.09

「日本一厳しい嫁さんがホメてくれた」


――モノづくりを始めたきっかけはなんですか?


もともと釣りが好きで、浮きとかルアーをバルサ材で作ってたんです。そのとき余ったバルサ材で動物を作ったら、“日本一厳しい”嫁さんがホメてくれた(笑)。それで夢中になって、嫁さんにホメられようっていっぱい作ったんです。そうやって作ったものを東急ハンズのハンズ大賞に出したら、入選して火がつきました。


――それが粘土のクレイアニメ制作に変わったのは?


スタッフから木工もいいけど、動かしたらどうでしょうって言われて。木工は動きが固くなるんで、ちょうど横に粘土が売ってたから、粘土で動画を作ったらどうなるんだろうと思ったのがきっかけですね。


――では、まったくの独学ですか?


そうですね。ネットで調べたりして、パソコンの(動画制作)ソフトを買って自分でちょこちょこやってました。人に見せようとかじゃなくて、嫁さんにホメられたい、が始まりですから。そこから知ってるスタッフが取材に来てくれて、いろんなことが始まりました

――SDGsをテーマにしたのは?


僕がこういうことやってるということで、せっかくやったら会社もSDGsを推進してるから、短い動画を作ったらどうですかってことで。それが、いまから5年くらい前で、SDGsについては聞いてはいましたけど、なんのこっちゃっていうくらいで。まあできるやろうという簡単な気持ちで受けて、大変なことになりました(笑)。

1つの作品完成までに…


――制作時に苦労した点はありますか?


SDGsは17の目標の下に169個のターゲットがあるんです。それを1つずつ、本を買って勉強して。動画の内容も問題がないかチェックが入ったうえで完成までたどり着けるので、1つ作るのに2カ月半から3カ月、全部で4年半かかりました。予算がないから作家もつかずに自分でやってくれってことで、制作費も前半は自腹。好きならばこそですね(笑)。


――実際に作品をつくるときには、どんなことを考えてましたか?


SDGsの目標とターゲットを1つずつ深掘りして内容を考えるんです。そして、作品のゴールを一応決めて、粘土を作ってるうちにこっちがエエってなって完成に近づいていくのが僕のやり方。だから自分の頭の中にしか絵コンテがないんですよ。動画は60〜100秒くらいなので、丁寧な表現はできません。だから子どもたちがSDGsってなんだろうって話し合うきっかけになったらいいなと思って作ってました。

――作品づくりで苦労したところを教えてください


「海の豊かさを守ろう」(目標14)みたいに目で見てわかるものは作りやすいんですけど、「ジェンダー平等を実現しよう」(目標5)とか、「人や国の不平等をなくそう」(目標10)みたいな手で触ってわかるもんじゃない、心の部分を表現するのは大変でしたね。

たとえば、お腹が痛いというのは字幕が入ればすぐわかる。でも、それを字じゃなくて粘土でどう表現するか、それが難しかったです。そしてそのアイデアについても、よく売れっ子作家の人は“降りてくる”とか言うじゃないですか。でも、降りてこない人間なんで(笑)。


――17の目標のなかでも思い入れのある作品はどれですか?


目標15の「陸の豊かさも守ろう」はわかりやすくて、音も入って迫力ありますね。それと目標16の「平和と公正をすべての人に」は最後に作った作品ですが、いまの世の中、いろいろな紛争とかあるので、作りながら涙するというか、入り込んだところがありました。

SDGsのことを考えるきっかけになれば!


――音楽はシンガーソングライターのむぎ(猫)さんが担当してますね。


あの方のおかげで動画がすごく盛り上がってます。目標16の「平和と公正をすべての人に」も、僕はミサイルとかを作ったので、激しい音になるんかなと思ってたら、静かな音で。でもそれが逆にハートを打つんです。静かに始まってさっと終わる、平和の大事さをよりクローズアップしてくれてて。だから自分の作品が5点としたら、8点にも10点にもなってます。全世界的、地球規模で見てほしいですね。


――今回、SDGsに関する作品をつくる前後で変わったことはありますか?


これまでは豊かな国と貧しい国があったら、豊かな国が援助したらエエやん、くらいの簡単なことと思ってました。でも勉強していくと、それも大事やけど、それだけじゃないってこともわかってきて。いろんなことに幅広く興味を持つようになりましたね。それで自分ができることはしていこうって考えるようになりました。


――今後つくってみたい作品は?


20分くらいの作品も考えたりしますけど、とりあえずは自由にお笑いのこととかをテーマにして4コマとかの短い作品をつくりたいですね。

――最後に個展やYou Tubeの映像を見てくれる人たちにメッセージをお願いします。


いつも思うんですが、粘土は四角い形で売ってます。それを自分で丸とか三角とか、魚にしたり、犬や猫になったり、形を変えていく。そういう作っていくおもしろさがあるんです。そして、同じ粘土で同じものを作っても、人それぞれ違うものができる。僕は本当のプロじゃないし、技術もまだまだです。でも、ちょっとやってみたらこんなことができる、そういうところを楽しんでもらえたら。
そして今回はSDGsがテーマなので、自分ならこう表現するなとか、ちょっとでもSDGsのこと考えてもらえたら、4年半やってきた甲斐がございます。そして期間中は僕もここにいますんで、来てもらっていろいろお話できればうれしいですね。

個展概要

「まるむし商店いそべのクレイアニメワールド」
期間:2月9日(金)~2月12日(月) 13:00~18:00
会場:LAUGH & PEACE ART GALLERY OSAKA
入場料:無料

展示内容:
・SDGsクレイアニメ動画17作品とその他のクレイアニメ動画の放映
・SDGsクレイアニメ動画で使用した粘土作品の展示

作品の動画はこちら